たすきばに自然言語で話しかける — AI業務管理秘書が叶える意味検索チャットの中身
「先月の振り返りで、リソース不足の話あったよね?」
このシリーズでは、たすきば Knowledge Relay の 3 つのユニーク機能 を順番に書いています。
- 提案機能(リリース済み)— B-2 で書いた とおり、プロジェクト作成時や課題起票時にプッシュ型で過去資産が並ぶ
- チャット意味検索(リリース済み・今日の主役)— 自然言語で過去資産を引き出す
- 「なぜ?」機能(リリース済み、 明日の記事で )— 提案に「なぜ関連するか」の説明が付く
今日は 2 つ目、 チャット意味検索 の話を書きます。リリースと同時に投入した機能で、 全ダッシュボードページ右下のフクロウ FAB からいつでも呼び出せます。その体験設計を解説します。
構造化フォームから、自然言語への拡張
B-2 の提案機能 の入力は、 構造化フォーム でした。
プロジェクト名: ECサイト リニューアル案件
目的(purpose): ...
背景(background): ...
対象範囲(scope): ...
これを保存した瞬間に提案エンジンが回り、過去案件の関連資産が画面に並ぶ——というのが Phase 1 の体験です。
チャット意味検索は、この 入口を自然言語のチャットに置き換える 機能です。
ユーザ: 「先月の振り返りで、リソース不足の話あったよね?」
たすきフクロウ:
以下の振り返りが該当します。
- 2026-03-15: Sprint 5 振り返り
> 「QA リソースが不足し、テストフェーズが伸びた」
> 関連リスク: R-005(リソース見積もり精度)
> 関連ナレッジ: K-012(QA 自動化導入の判断基準)
「ユーザがフォームを埋める」を「ユーザが話しかける」に変えるだけです。けれど、 使う側の体験は別物 になります。
同じ embedding 基盤を、入口だけ替えて再利用する
ここがチャット意味検索の 技術上の正体 です。
チャットのクエリ文も、Voyage AI で 1,024 次元のベクトルに変換する。
B-2 で詳しく書いた とおり、ナレッジ・リスク・課題・振り返り・メモ・プロジェクトの 作成・更新時に Voyage embedding が content_embedding 列に保存されています。
チャット意味検索は、 ユーザの発話文を Voyage に通してベクトル化し、 pgvector で最も近い資産を引き出す だけ。
発話 → Voyage → クエリベクトル
↓
pgvector で Cosine 類似度計算
↓
上位 N 件を取得
↓
チャット形式で表示
新しい機能を作っているように見えて、 エンジン部分は提案機能と同じ です。変えたのは「入口」と「出口」だけ。
これが、たすきばが 「3 つの機能を別々に作らない」 という設計判断の意味です。提案機能のために作った embedding 基盤を、 そのまま流用できる から、チャット意味検索を足すときの追加コストは抑えられました。
ユーザに渡したい体験 — 「思いついたまま聞ける」
機能の中身よりも、 ユーザが感じる体験 を先に書かせてください。
私が想像しているのは、こういう瞬間です。
プロジェクト管理画面を眺めながら、ふと「あれ、似たような課題、去年やった案件で見た気がする」と思う。
普通なら、
- メモを思い出す
- 検索ボックスにキーワードを入れる
- 思い出せず、結局あきらめる
ここに、たすきフクロウがチャットボタンとして画面右下に居る。クリックして、 「去年の DB 移行案件で似たトラブルあった気がする」 と話しかけるだけ。
返事が来ます。「以下の課題が該当します。 2025-09-12 の Sprint 3 課題: 『移行スクリプトの想定 row 数を超過し、batch 処理が timeout』。関連リスク: R-018(バッチ実行時間)。関連ナレッジ: K-031(PostgreSQL の copy バッチ処理パターン)」。
——この 「思いついたまま聞ける」 距離感が、チャット意味検索が届ける体験です。
提案機能は 画面遷移時のプッシュ通知 、チャット意味検索は 思いついた瞬間に話せる相棒 。同じ embedding 基盤の上に、2 つの異なる接点が乗ります。
「チャット」と「全文検索」は別物である
ここで誤解されたくないので、はっきり書きます。
たすきばのチャット意味検索は、 キーワードを使った全文検索ではありません 。 ChatGPT のような汎用 LLM チャットとも違います。
| 種類 | 仕組み | できること | できないこと |
|---|---|---|---|
| 全文検索 | キーワード一致 | 完全一致のテキスト発見 | 表記揺れ・概念類似 |
| 汎用 LLM チャット | 大規模言語モデル | 一般的な会話 | 自社の過去データを根拠にした応答 |
| たすきばのチャット意味検索 | クエリを embedding 化 → 自社 DB の content_embedding と類似度計算 | 自社の過去資産に基づいた、意味類似度ベースの応答 | 自社 DB に無い情報の生成 |
たすきばのチャットは、 「あなたの組織が過去に蓄積した資産」だけを根拠にする 設計です。ハルシネーション(LLM が嘘をつく現象)の心配が少なく、 業務 SaaS としての信頼性 を担保しやすい構造になっています。
たすきフクロウが応答する — マスコット設計との連動
M-2 で書いた通り 、たすきフクロウは 3 つの元画像 を持っています。そのうちの 1 つ、 チャット意味検索専用のアバター画像 は、まさにこの機能のために設計されています。
吹き出しの輪郭にフクロウが内包されていて、 「話しかけられる存在」 が一目で伝わる構図。 A-5 で書いた 「押し付けず、静かに、見守る」 というキャラクター方針が、チャット UI でも貫かれます。
「教える」 ではなく 「気づくのを手伝う」 トーン。 「ここを見てください」 ではなく 「以下が該当します」 という受動形寄りの返答。 マスコットのコピー方針が、チャット応答の文体にもそのまま使われていきます。
チャット意味検索が「3 つの居場所」を結ぶ
最後に、思想の話を少しだけ。
A-2 で書いた 「ユーザに届けたい 5 つの体験」を、もう一度振り返ってみます。
- A. 第一印象 — ストレスを感じさせない
- B. 日常使用 — 活力 / 気が置ける場所 / 新しい発見
- C. 困った場面 — 自然と気づける
- D. 長期使用 — 成功率を上げてくれる
- E. 擬人化するなら — 信頼できるパートナー
B の 「気が置ける場所」 と 「新しい発見」 の 2 つに、チャット意味検索は特に効きます。
孤独な PM の隣に、 話しかけられる相棒 が居る。 何気なく投げた一言から、 過去の自分やチームの記録 が返ってくる。これが、たすきばが目指す 「業務 SaaS なのに居場所」 の温度感の、もう一段先の景色です。
明日は 3 つ目のユニーク機能、 「なぜ?」機能 の話を書きます。こちらもリリース済みで、提案結果に「なぜ関連するか」の説明文が付く体験です。LLM Re-ranking の技術判断と、 Pro プラン差別化の中身です。
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たすきば について
たすきば Knowledge Relay のチャット意味検索は、リリース(2026-06-01)と同時に提供しています。 各機能の体験は プロダクトページ からご確認いただけます。