もくもく会で終わらせない — LTが学びを「資産」に変える理由
最近、何か新しいことを学びましたか。
このブログを読んでいる人の多くは、きっと「はい」だと思います。では次に、その学んだことを誰かに話しましたか。
ここで少し手が止まる人もいるはずです。私は、この一歩の有無にエンジニアの成長を大きく左右する分かれ道があると思っています。
もくもく会はとても良い仕組み
IT業界では「もくもく会」がよく開催されます。みんなで集まって、各自が黙々と勉強や作業をする会です。一人だと続かないことも、人がいると集中できる。これは本当に良い仕組みで、私も好きです。
学習や個人開発は孤独になりがちで、「今日は疲れたからいいか」と手を止めそうになる日もあります。それでももくもく会の場に行くと、不思議と手が動きます。周りが頑張っている空気そのものが、自分の集中力を引き上げてくれるからです。学習を継続しやすくする仕組みとして、もくもく会はとても優秀です。
でも、学びが自分の中で完結してしまう
ただ、もくもく会には一つだけもったいないと感じる点があります。それは、学びが自分の中だけで完結しがちなことです。
せっかく時間を使って学んでも、外に出さなければその学びは頭の中に閉じてしまいます。「読んだときは理解した気がした」「その場では分かった気がした」のに、数日後にはうまく説明できない。これは珍しいことではなく、むしろ学習あるあるです。
学習を強くするのは「思い出す」行為
学んだ内容を本当に自分のものにするには、思い出す行為が重要だと考えています。ただ読む・聞くだけでなく、何を学んだのか、なぜそうなるのか、どこがポイントだったのかを自分の頭の中から引っ張り出す。この「思い出す」が入ると、知識はかなり強くなります。だから私は、学習することに思い出すことを組み合わせるのが、学習成果を最大化する方法の一つだと思っています。
そこでLTです
そこで出てくるのがLT(ライトニングトーク)です。一般的には3〜5分程度の短い発表で、学んだこと・気づいたこと・試してみたことを短時間で共有します。
もくもく会とLTがよく一緒に開催されるのは、この組み合わせが理にかなっているからです。もくもく会がインプット、LTが思い出して言語化するアウトプットだとすれば、学んだ内容をその日のうちに思い出し、言葉にして人に伝える流れが自然にできます。これは学習効率の観点でもかなり強い流れです。
一番勉強しているのは、話している本人
LTの価値は「誰かに教えること」だけではありません。むしろ一番恩恵を受けているのは話している本人です。人に説明しようとすると、曖昧に理解していた部分が見え、話の順番を整理する必要が生まれ、「つまり何なのか」を自分の言葉で定義することになります。質問されれば、自分の理解の穴にも気づけます。
ただ読むだけでは通過してしまう内容も、「3分で人に話す」と決めた瞬間に急に解像度が上がります。理解しているつもりと説明できる状態の間には、大きな差があり、LTはその差を埋めてくれます。この感覚は、マネージャの仕事は「答え」ではなく「問い」だったで書いた、相手の理解を引き出す問いかけの構造ともよく似ています。
情報発信は、学びを「資産」に変える
エンジニアにとって自己研鑽は大切です。そして、外への情報発信は、それ以上に大切だと思っています。理由は二つあります。
一つは、話すことで理解が深まること。ここまで書いてきた通り、人に話そうとするプロセスそのものが強い学習になります。
もう一つは、学びが資産として残ることです。頭の中の知識はどうしても薄れていきますが、LT資料や記事、メモとして残せば、未来の自分を助けてくれますし、誰かの役にも立つ可能性があります。一度外に出した学びは、ただの記憶ではなく再利用できる資産になります。この考え方は、振り返り(KPT)が次に活きない本当の理由で書いた「書いて終わり、そして埋もれる」構造とも地続きで、記録は残すだけでなく後から呼び戻せる形にしてこそ資産になります。
「話すのは恥ずかしい」「発表することがない」と思う人へ
みんなの前で話すのは恥ずかしい、発表できるほど詳しくない、そもそもネタがない——そう思う人もいるはずです。
でもLTは完璧な内容を話す場ではなく、学んだことを発信する場です。今日初めて知ったコマンド、ハマったエラーと解決方法、まだ理解しきれていないけれど面白かった概念。こういう小さな学びこそ、他の人にとっても役立つことがあります。もし間違っていたら修正すればいい。出して、フィードバックを受けて、直して強くしていく姿勢は、「失敗の科学」を読んで考えたことで書いた、失敗を検知・報告・活用する文化ともつながっています。
まずは3分でいい
「LTをやってみよう」と言われると重く感じるかもしれませんが、最初は3分で十分です。
- 今日学んだこと
- 何が分からなかったか
- 調べて分かったこと
- 明日どう活かすか
これだけで、立派なLTになります。短いからこそ準備のハードルも下がり、まず一歩を踏み出しやすくなります。
さいごに
もくもく会は、学習を継続しやすくする本当に良い仕組みです。でも、そこで終わるのは少しもったいない。学んだことは、思い出して、言葉にして、外に出すことで強くなります。その役割を担うのがLTです。
もくもく会でインプットして、LTでアウトプットする。すると、理解が深まり、学びが資産として残り、次の学びにつながる循環が生まれます。完璧でなくて大丈夫です。まずは、小さな学びを3分で話すところから始めてみませんか。
次にもくもく会に参加する機会があれば、最後にひとつだけ考えてみてください。「今日学んだことを、3分で誰かに話すなら何を話すか」。この問いを持つだけで、学び方が少し変わるはずです。
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