マネージャの仕事は「答え」ではなく「問い」だった — 『新 問いかけの作法』が教えるチームづくり

「お通夜ミーティング」を主催していたのは、自分だった

会議で誰も発言しない。「何か意見ありますか?」と聞いても、返ってくるのは「特にありません」ばかり。

そんな会議の空気、覚えがありませんか?

駆け出しマネージャだった頃の私は、これを完全に メンバー側の問題 だと思っていました。「もう少し主体的に発言してくれたらいいのに」と。今振り返ると、本当に恥ずかしい話です。

そんな自分の認識を、根本からひっくり返してくれたのが書籍『新 問いかけの作法』でした。読みながら、ゆっくり気付いていきました。

チームメンバーの個性豊かな才能を発揮させるには、「問いの質」を変える必要がある。

お通夜ミーティングを主催していたのは、メンバーではなく 自分の問いかけそのもの だったのです。

まだまだ未熟な身ですが、本書から学んだことを、自分の言葉で整理してみます。

「軍事型」から「冒険型」へ

本書は、チームの世界観を 2 つに分けます。

世界観特徴
軍事型過去の成功パターンを再現する。指示と実行の階層
冒険型未知の状況で、柔軟・想像的に動く

不確実な現代では、冒険型のチームには そもそも成功パターンが存在しません。だからこそ、こだわりを持ったメンバー同士のコミュニケーションが「異なる視点」を持ち寄って、答えを作っていく。

必要なのは、人間固有の好奇心やこだわりを チームの資源として扱う こと。最適解を探す議論ではなく、相手の暗黙の前提に興味を持つ 対話 を仕掛ける。

その最小単位の道具が 「問いかけ」 です。

問いかけの基本定石 — 4 つの型

本書は問いかけの基本定石を 4 つに整理しています。読んだ瞬間に「あ、自分これ全部できてないな」と頭を抱えた章でした。

① 相手の個性を引き出し、こだわりを尊重する

チームのポテンシャルは、メンバーのこだわりが発揮され、違いが尊重されたときに開く——本書はそう言います。良い問いかけは、相手への 好奇心 から生まれて、こだわりの理由まで掘り下げられるもの。

評価のための質問は、その逆。相手を萎縮させるだけです。

② 適度に制約を設け、考えるきっかけを作る

何でも自由に言ってください

これ、私もよく口にしていました。でも本書によると、これは 最も発言が出ない問いかけ なのだそうです。

人間は、自由度が高すぎるとかえって自由な発想ができない。「予算が半分になったら?」「3 年後どうなりたい?」のように、軸と制約を与えるほうが、結果として自由な答えが出てきます。

③ 遊び心をくすぐり、答えたくなる仕組みを作る

悪い問いかけは相手にプレッシャーを与え、口を閉ざさせる。逆に、遊び心——余白や実験——を含ませると、思考が動き始めます。

たとえば「良い提案はありますか?」ではなく、あえて「悪い提案はありますか?」と聞いてみる。評価面談や権威ある会議など、オフィシャルな場面ほど、この定石はじわじわ効きます。

④ 凝り固まった発想をほぐし、意外な発見を生み出す

メンバーのこだわりは、普段見せない一面に潜んでいます。これを引き出すには、相手が繰り返し使っている言葉に揺さぶりをかける のが有効です。

たとえばチームに「利便性は高いほうが良い」という暗黙の前提があれば、「不便だけど使い続けているものは?」と問う。逆方向の問いから、メンバーが心から大切にしている価値(不便でも続ける愛着・哲学)が顔を出してきます。

問いかけの真価は「サイクル」で発揮される

定石は単発でも使えますが、本書の真価は 見立てる → 組み立てる → 投げかける という 3 つのサイクルにあります。

見立てる ───▶ 組み立てる ───▶ 投げかける
   ▲                              │
   └─── 相手の反応を観察 ◀────────┘

① 見立てる — 観察に「意味づけ」を加える

見立てとは、観察に 意味づけ することです。会議中に頬杖をついている社員に対し、当たっているかはさておいて「退屈なのかな?」「不満があるのかな?」と意味づけして、初めて見立てが成立します。

観察ガイドラインは 4 つ:「何かにとらわれていないか?」「こだわりはどこにあるか?」「こだわりから外れていないか?」「何かを我慢していないか?」。

② 組み立てる — 質問の設計

質問は 3 ステップで組み立てます。未知数を定める(何を明らかにするか)→ 方向性を調整する(主語の抽象度を上げれば視座が上がり、個人にすれば自分ごとになる)→ 制約をかける(例:「3 年後どうなりたい?」)。

③ 投げかける — そして再び見立てへ

問いかけたら、相手の反応をまた 見立てる。表情、沈黙、言い澱み——すべてが次の問いの材料です。サイクルが回るほど、対話の解像度が上がっていきます。

苦手なメンバーとどう向き合うか

「気の合う人とならできるけど、苦手なメンバーが相手だと話が違う」

そう感じている人、私だけではないと思います。本書はこの問いにも切り込みます。

組織を変えれば苦手な相手から距離を置けますが、それを続けると、マネージャの 視野はどんどん狭まる と本書は言います。そして、こう言い切ります。

マネージャとは、自分の好き嫌いを超えて、多様な人と協働できることであり、それがマネージャとしての器でもある。

なかなか厳しい一文です。では具体的にどう向き合うのか。本書の答えは、ちょっと拍子抜けするほどシンプルでした。

相手を変えようとするのではなく、自分がなぜ相手を苦手と感じているのか、自分の深層心理に目を向ける。

苦手意識の正体は、たいてい相手ではなく 自分の中にある何か。過去の経験、未消化の感情、自分の価値観の裏返し。それを言語化できると、相手は驚くほど「ただの違う人」に見えてきます。

「言葉を発する前に自分の内側を点検する」という意味では、「言葉は刃物」の記事 で書いた、発する前に言葉を熟成させる習慣と地続きの態度ですね。

さいごに

『新 問いかけの作法』を読んで一番揺さぶられたのは、マネージャの仕事の本質は「答え」ではなく「問い」だった という気づきでした。

答えを示せばチームは動く——これは軍事型。 良い問いを投げればチームが自ら動き出す——これが冒険型。

私はまだまだ未熟で、つい答えから話してしまうクセが抜けません。それでも、本書の定石とサイクルを意識するだけで、ミーティングの空気がほんの少しずつ変わってきた感触はあります。

モチベーションを仕事に持ち込まない記事 と同じく、問いかけはマネージャ個人の才能ではなく、チームの成果を生み出す仕組みとして設計できる——これが本書の最大のメッセージだと、私は受け取りました。

もし、あなたも次のミーティングでお通夜の空気を感じたら、メンバーを見る前に、自分が直前に投げた問いを一つだけ振り返ってみてください。たぶんそこに、空気を変える糸口が落ちています。

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