エンジニアの職業倫理を考える — 技術力の前に置きたい「お客様ファースト」

エンジニアにとって大切なことは何でしょうか。2021年に新卒でIT業界に入り、業務経験だけでなく職務経歴書には書かれないようなことも含めていろいろな経験をしてきた今、私にとっての答えはお客様ファーストであることです。そして、知識や経験はその土台になると考えています。

技術力より先に置きたいもの

エンジニアの価値というと、まず技術力、設計力、実装力、スピード、経験年数、資格といった言葉が浮かびます。どれも大切です。実際に私自身、詳細設計からテスト・運用保守まで一貫して対応し、複数言語やインフラ領域まで学んできました。ただ、それでもなお、技術力より先に土台として必要なものがあると思っています。それが、お客様ファーストの姿勢です。エンジニアの仕事は自己満足のためにあるのではなく、誰かの課題を解決し、誰かに価値を届けるためにあるからです。

職業倫理という物差し

ここで少し抽象度を上げると、職業倫理という言葉に行き着きます。職業倫理とは、その職業にとって何が正しく何が不正解なのかという問いに、一つの指針を与えるものです。技術者の職業倫理としてよく語られるのは、公共の利益を最優先し責任ある行動をすることですが、私はこれをより実感に近い言葉に言い換えて、お客様に誠実であること、お客様を最優先することだと捉えています。つまり大切なのは、単に正しいコードを書くことではなく、誰のためにどんな責任を持ってそれを書くのかを忘れないことなのだと思います。

お客様ファーストを支える2つの柱

お客様ファーストには、少なくとも2つの要素が含まれると考えています。1つ目は誠実であること。分からないのに分かったふりをしない、リスクやミスを隠さない、都合の悪いことをごまかさない。この基本が信頼を作ります。うそをつくと信頼を失い、本音の要望を引き出しにくくなるという話は、以前技術より先に信頼をつくるでも書きました。2つ目は、自分の知識と経験を総動員すること。誠実さは気持ちだけでは足りず、相手のために本気で向き合うなら持てる力を尽くすことも必要です。お客様ファーストとは、正直であること・責任を持つこと・持てる力を尽くすことのセットだと思っています。

知識と経験は、お客様ファーストの土台になる

大事なのは、お客様ファーストと知識・経験は対立しないということです。むしろ知識や経験は、お客様ファーストを実現するための土台です。技術的な選択肢を知らない、リスクを見抜けない、より良い設計や代替案を提案できない状態では、十分な価値提供は難しくなります。だからこそ学ぶことに意味があります。私はC#、Java、Python、JavaScript、TypeScriptなど複数言語の経験に加え、Linux・DB・Azureなどインフラ寄りの知識も広げてきましたが、これは「できることを増やしたい」からというより、相手に誠実に向き合うための武器を増やしたいという感覚に近いです。この考え方は、「自分のギャップは技術じゃない」と気づくまでで書いた、経験を形式知に変えることの延長線上にあるとも感じています。

経験の浅さは、知識で補ってから行動に変える

私たちはまだまだ経験が浅いですが、経験が浅いこと自体は悪いことではなく、問題は浅いままで止まることです。経験が足りないなら、まず知識で補う。知識を得たら、今度は行動して経験に変える。この循環が重要だと思っています。資格取得を通じて基礎から応用まで幅広い知識基盤を固めておけば、新しい技術のキャッチアップも速くなります。研修は足りない経験をすぐに埋める場所ではありませんが、経験不足を補うための知識の土台を作ることはできます。トレーナーとして後輩の自立を設計する視点はOJTの本質は「教えること」ではなく「自立できる状態の設計」だったで書きましたが、受け手としての研修も、これから先の価値提供のために使い倒すものだと考えています。

研修を有意義にするのは、失敗を覚悟した能動的な行動

研修や日々の業務を有意義にするには、失敗を恐れず能動的に行動することが大事だと思っています。質問する、手を動かす、自分から試す、提案する、役割を取りに行く。こうした行動はうまくいくこともあれば失敗することもありますが、どちらにせよ何かが変わります。逆に受け身のままだと大きな失敗は減っても、大きな成長も起こりにくいです。能動的に動くことの価値は自分の成長だけでなく、誰かが質問しやすくなる、挑戦する空気ができるというかたちで周りにも波及します。この波及効果は、自分のふるまいが相手の自己効力感を支えるという自律性は「与える」ものでもあるの話とも重なるところがあります。

まとめ

ここまでをまとめると、私にとってエンジニアに大切なことは、お客様ファーストであること、誠実であること、知識と経験を磨き続けること、そして失敗を恐れず能動的に行動することの4つです。私たちはまだ発展途上です。だからこそ、研修や学習の時間をただ消費するのではなく、自分なりの職業倫理を見つける時間にしていくことが大切だと思います。何を正しいとし、何を譲れないとするのか。その答えを少しずつ見つけながら、失敗を恐れず能動的に行動していきたいです。

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