「整った UI」哲学のルーツ — 高校の古典ノートで S+ をもらい続けた話

なぜここまで「シンプル」にこだわるのか

たすきばの UI には、強い個人的こだわりがあります。

物は、あるべき場所にあるべき。 整った環境で仕事をしたい。

これは、私個人の哲学そのものです。そしてそれが、サービスの UI 設計に、ほぼそのまま反映されています。

なぜここまで「シンプルさ」「整った環境」にこだわるのか。振り返ると、いくつか原体験があります。今日はその話を書きます。

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1. 高校時代のノートで毎回 S+ をもらっていた

高校の古典の授業で、3 か月ごとにノートを提出する習慣がありました。

定期テストの後、ノートに評価が加えられて返却されるのですが、私は毎回 S+ ——その期で最高評価、しかもクラスで唯一 でした。

先生はノート返却時に「クラスで一番きれいだった人」として、毎回名前を読み上げてくれました。本当に毎回です。

このとき私が何をしていたかというと、ただ綺麗に書いていたわけではありません。 「読み手が、3 ヶ月後の自分やテスト前の自分や採点する先生にとって、読みやすい並び」 を、3 か月ごとに繰り返し設計していたのです。

色を増やしすぎない。余白を取る。同じ役割の情報は同じ場所に書く。授業の脱線はノートのどこに置くか、ルールを最初に決めておく。

——いま振り返ると、これは UI 設計と完全に同じ作業でした。

2. 『嫌われる勇気』に出会って、シンプル思考が強化された

人生観に影響を与えた本に、アドラー心理学を題材にした 『嫌われる勇気』 があります。 『嫌われる勇気』読書ノート ① — トラウマ論を捨て、目的論で生き直す で書いたとおり、本書のいちばんのメッセージは、

他者の課題と自身の課題を分離し、自分は自身の課題にのみ集中する。

ということでした。

世界は思っているよりシンプルで、シンプルに生きられれば人間関係の問題も解けていく、という発想。これに触れてから、私は 物事をシンプルに考える ようになりました。

たすきばの開発哲学は、ここから派生しています。画面に並ぶボタン一つひとつに、 「これは本当にこの画面の責務か?」 を問い続ける態度は、たぶんこの本に直接由来しています。

3. 仕事で「情報が散見する環境」を見すぎた

仕事を始めてからは、 情報が点在し、整理されていない環境 を本当にたくさん見てきました。

開発フェーズでは運用保守を度外視するあまり、情報が散見する状況が起こりがちです。引き継ぎのために集めようとしたら、3 つのフォルダと 2 つのチャットツールと、誰かのメール本文の中にまたがって散らばっている——よくある景色です。

それを目にするたびに、私はずっとこう感じてきました。

ここを整えるだけで、組織は変わるのに。

この実感の積み重ねが、

  • 「クリエイティブな時間が浪費される構造への憤り」(連載第 1 回
  • 「整った環境を作りたい」という価値観(本記事)

の両方の源泉になっています。

“整った UI” の 5 つの定義

たすきばが目指す「整った UI」を、私は次のように定義しています。

1. 余白がある

詰め込みすぎない。要素同士の “息継ぎ” を確保する。

2. 配色が抑えられている

文字過多・カラフル過剰は、目を疲れさせて体力を奪う。 1 日 8 時間見ても疲れない景色を目指す。

3. 一貫性がある

同じ役割のボタンは、別画面であっても 同じ配色・同じ位置・同じラベル名 。ユーザが意識しなくても「このボタン = この機能」と直感できる状態を、しつこく作り続ける。

4. 余計な要素がない(引き算の美学)

機能の多さは妥協しない。けれど UI の複雑さは絶対に許容しない 。この 2 つはセットで持つべきものではなく、別の問題として扱う。

5. 視線の流れが自然

課題一覧とリスク一覧、振り返り一覧とメモ一覧——構造の似た画面では、 ボタン配置を変えない 。画面が変わっても同じ機能が同じ場所にある状態を、徹底する。

“あるべきでないものは置かない” — 引き算の徹底

「物はあるべき場所にあるべき」の対偶として、 「あるべきでないものは置かない」 ことも徹底しています。

私自身、価値を感じないものは買わないし、自分の周りにも置きません。この感覚は UI 設計でも同じです。

  • 使われない機能は、UI に置かない
  • 過剰な装飾・グラデーション・アニメーションは入れない
  • 不要な確認ダイアログは出さない

「念のため」と称した冗長な情報表示は、たいていの場合「念のため」が言い訳になっています。本当に必要な確認だけを残す。

ただし、「あいまい表現」は文脈で使い分ける

ここだけ少し例外があります。

断言すべき領域

「テナント分離」のような、 ユーザからの信頼の核心に関わる、絶対に変更しない約束 。ここをあいまいに表現すると、信頼の根が腐ります。

可能性を残すべき領域

「生成 AI の今後の拡張」のような、 現実的に進化が起こり得る領域 。ここは、ユーザもむしろ期待を持って読みたい場所です。曖昧さは余白として機能します。

「全部はっきり書くべき」でも「全部曖昧にすべき」でもなく、 領域ごとに方針を切り替える 。これは『嫌われる勇気』の「課題の分離」と発想がよく似ています。何が自分の責任で、何がそうでないかを、まず分ける。

機能の多さと UI の複雑さは、別の問題である

最後に、このシリーズで何度も繰り返したい一文を置いておきます。

機能の多さは妥協しない。UI の複雑さは、絶対に許容しない。

これは、個別の判断局面で、毎回参照する基準になっています。

たすきばを「地味だ」と感じる人がいるかもしれません。たぶん、その感想は正しいです。私が、機能を派手に見せることに労力を払っていないからです。代わりに、 何度開いても疲れない景色 を作ることに、その労力を寄せています。

その景色を目指したのは、もしかしたら、高校時代の古典ノートからだったのかもしれません。

次回は、たすきばが市場の中で取る立ち位置を、 6 つの差別化軸 で言語化します。「市場リサーチではなく、こだわりの結果として、ここが違った」という順序で書きます。

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たすきば Knowledge Relay の UI 設計は、引き算の美学で貫いています。 プロダクトページ では、実際の画面イメージとともに「整った UI」の温度感をご確認いただけます。

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