努力は裏切るのか、裏切らないのか — 縦軸と横軸で考える『運転者』の視点

努力は裏切らないと思いますか。資格勉強、スポーツ、ダイエット、読書、技術学習、個人開発——結論から言うと、私は努力の捉え方次第で、どちらとも言えると考えています。

「努力は裏切らない」という言葉への違和感

必死に勉強したのに資格試験に落ちた。練習したのに結果が出なかった。毎日コードを書いたのに評価につながらなかった。こういう場面に出会うと、「努力って普通に裏切るのでは」と思う気持ちも自然です。私はこの違和感を、努力そのものが間違っているからではなく、努力の見方が一つではないからだと考えています。

『運転者』の「人生のポイント」という考え方

喜多川泰さんの小説『運転者』では、人生はポイントカードのようなものだと描かれます。日々の行いによってポイントを貯めていき、その蓄積が最終的な幸せにつながる、という考え方です。

周りに「最近あの人、なんだか運が良いな」と思う人はいないでしょうか。そういう人は突然幸運になったのではなく、それまでに貯めてきた人生のポイントを使っている人なのかもしれません。日本には「徳を積む」という言葉がありますが、これもかなり近い意味だと感じています。人生のポイントを貯める、徳を積む、努力を重ねる——完全に同じではないにせよ、かなり重なる概念として見られるのではないか、というのが今の私の考えです。

努力を「縦軸」で見ると、努力は裏切る

努力を縦軸で捉えてみます。イメージは登山です。頂上を目指して一歩ずつ登り、「頂上まで行けたかどうか」で努力の結果を評価する見方です。資格試験なら、頂上=合格、合格した=努力が報われた、不合格だった=努力が報われなかった、という構図になります。この見方に立つと、試験に合格できない努力は努力ではないとすら言えてしまう。かなり厳しい見方ですが、この軸だけで努力を見ている人は多いと思います。縦軸の努力は成果が明確な分、結果が出なかったときのダメージも大きく、縦軸だけで測ると努力は簡単に「裏切るもの」になります。

努力を「横軸」で見ると、努力は裏切らない

次に、努力を横軸で捉えてみます。これは、自分の努力が周囲にどんな影響を与えたかという見方です。自分が勉強している姿を見て、周りの人が刺激を受ける、読書を始める人が出てくる、挑戦する空気が生まれる。たとえ自分自身が目標を達成できなかったとしても、努力はそこで終わっていません。連鎖し、つながりを生み、他者の行動に影響を与えているからです。

以前、「報われない努力はない」— 運をためるという考え方で書いたように、実際に私は「あなたの姿を見て、勉強を始めました」と言ってもらえた経験があります。この一言で、努力は自分の中だけで完結しないのだと初めて実感できました。まだ結果が出ていないと思っていた努力が、誰かの行動を動かしていた。これは横軸で見た努力が「人生のポイント」として積み上がっている証拠だと感じます。

モチベーションが落ちたときほど、横軸で見る

継続して努力していると、すぐ結果が出ない、成長が実感できない、この努力に意味があるのか分からなくなる、という時期は誰にでもあります。モチベーションを仕事に持ち込まないで書いた仕組み化の話は縦軸の努力を続けやすくする工夫でしたが、それでも苦しくなる瞬間はあります。そんなとき、努力を縦軸だけで見ていると、頂上に近づいている実感がないぶん全部無意味に思えてしまいます。でも横軸でも見てみると、自分の積み上げが誰かの刺激になっているかもしれない、共有した学びが誰かの役に立っているかもしれないと、今の努力に別の意味が見えてきます。

発信は、努力の横展開そのもの

この視点に立つと、情報発信の価値も変わります。学んだことを書く、試したことを共有する、失敗したことも含めて外に出す。これは単なる記録ではなく、努力の横展開です。自分一人の努力を自分一人のものとして終わらせず、外に出すことで他の誰かの行動を動かせるかもしれません。自律性は「与える」ものでもあるで書いたように、自分のふるまいは周囲にわずかでも影響を与えられる。努力もまた、静かに周囲へ伝播していくものなのだと思います。

さいごに

努力は裏切るのか、裏切らないのか。私の答えは、努力の捉え方次第でどちらとも言える、です。目標達成を基準にする縦軸で見れば、結果が出ない努力は裏切るように見えます。でも周囲への影響で見る横軸に立てば、たとえ目標未達でも努力は誰かを動かしうる。この意味で、努力は裏切りません。

苦しくなったときに縦軸しか持っていないと、努力を続けるのはとても難しくなります。だからこそ、努力を横軸でも見られるようにしておくことが、継続の支えになるのだと思います。今「こんなに頑張っているのに報われない」と感じているなら、その努力は頂上に届いていないだけで、誰かに火をつけているかもしれません。

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